それが君の願いなら。



「俺のことも、名前で呼んで下さい」


「呼んでるよ?」


「そうじゃなくて、呼び捨てで」


いきなりのハードルにあたしはたじろいでしまう。


呼び捨て…。 は、恥ずかしい……。


「…じゃあ、あたしと話す時も敬語は止めて?」


対抗心と言うわけでもなんでもないけど、なんとなく…。


だけどあたしの言葉にあっさり「分かった」と頷く侑京くん。


あたしも呼ばなくちゃ…。


そう思うのに恥ずかしくてなかなか言葉が出てこない。


う、侑京……くん…。


心の中でさえ難しいのに、大丈夫かな、あたし…。


「凌?」


あたしの顔を除き込みながら聞いてくる。


「………う…きょう……」


恥ずかしくて俯くあたしは本人の反応を待つ。


……のに、何も反応が返ってこない…?


顔を背ける侑京の顔を除き込めば、そこには初めて見る照れた顔。


それが新鮮で。なんだか可愛くて。


素直に笑顔が零れた。


「可愛ね」


そう言うあたしにムスッとした顔で、


「……凌の方が可愛いに決まってんじゃん」


なんて言われるとあたしの方が照れてしまう。


「そ、そんな事、サラッと言わないでよ…」


「仕返し。でも本音。」


「…っ! そ、それも禁止!」


「なんで?」


「…だって、心臓幾つあっても足りないもん」


「…っ凌も、そう言うの禁止」


「そう言うの?」


「可愛いこと言うの。可愛すぎて倒れそうなんだけど…」


「〜〜っ!またそう言う事言う!」


「あはは!」