それが君の願いなら。



研修棟の階段。


……どこで待ってよう。 分かり易いところがいいよね?


ってか、なんで階段?


雅ちゃんの言葉に疑問符を浮かべながら、気を紛らわせながら侑京くんを待つ。


深呼吸して時計を確認するも、まだ此処に着いて3分も経っていない。


ドキドキ。バクバク。 今のあたしの心音にピッタリな音は何だろう。


変な事でも考えてないと本当に死にそう…。


あぁどうしよう…。 侑京くんいつ来るのかな……。もしかして来てくれないかな? でも、侑京くんはそんな人じゃないし…。


あ、でも、友達や他の女の子からの先約があったりしたらあたしよりそっちを優先するにき…、


「先輩」


「へっ」


色々と考え過ぎて気が付けば侑京くんに名前を呼ばれていたあたし。


それがなんだか恥ずかしくって意味もなくモジモジしてしまう。


あぁ……今からもっと凄いこと言うのに…!


そう思いつつ深く、深く、深呼吸をした。


「う、侑京くん…」


「…はい」


「あ、あのねっ。あたし、っその……」


侑京くんの名前を呼ぶだけで精一杯なあたしは、目を見て言おうと思っていたのに実行出来ない。


恥ずかしい……と言うより、自分の気持ちを伝える事が難しくて。


ただ一言『好きです』って。『付き合ってください』って伝えるだけなのに。


どうしてこんなに泣きたくなるの。


そんなあたしを見兼ねて侑京くんが声をかけてくれた。


「凌先輩」


「ぅ〜…はい……」


「もし違ってたらごめんなさい」


「え? なっ…」


「……好きです。俺と、付き合ってください」


「…っ、え?」


何も言い出さないあたしに呆れて文句を言われるんだと思ってた。だから自然と俯いてしまっていたあたしは顔を上げる。


だって、分かんない。


自分が、侑京くんに何を言われたのか。