それが君の願いなら。



「…あ!トイレ涼しい!」


トイレのドアを開けるとひんやりとした空気が頬を撫でる。


嬉しそうにトイレに入って行く樹英の後に続きながら「ホントだ」と呟く。


あたしは鏡でショートの髪を触り、スカートのポケットに常備しているスマホを取り出す。


でもこっちのトイレ電波ないんだよね…。


あたし達の教室から近いトイレはいつも電波がなくって困る。電話だってろくに出来ないし、LINEの通知も来ない。


だからと言って遠い2年教室側のトイレに行こうとも思わない。


「最近どう?」


「――えっ?」


なんとなく見ていたカメラロールに気を取られいたせいか、樹英の言葉に遅れて返事をする。


「うきょーくん!」


「何もないよ。 …ホントに。」


何もないと言ったあたしの顔をジーッと見てきた樹英に念押しする。


「困ってる時は樹英たち3人に相談するでしょ?」


「まぁ、そっか…」


あたしの言葉に樹英は納得した様子。 トイレを出て廊下を歩きながらも樹英は質問してくる。


「……告白は、しないの?」


その言葉にあたしはうーんと迷いながら答えた。


「今はしない。OKを貰いたいわけじゃないけど、今はまだ言える勇気がないから…」


小さく笑ったあたしを見て樹英はそっか、と呟いた。


謝るあたしに「樹英こそごめん」と言った後、「応援してるからね!」と強い言葉をくれた。


満面も笑みでお礼を言って教室のドアを開けた。


「おかえり〜」


そう言うのはあたしの席に座って雅ちゃんと話してるなっちゃん。


「教室涼しいね〜!」


嬉しそうに自分の席に戻っていく樹英に笑い、なっちゃんの上に座った。


「んん!? 凌ちゃんまた痩せた?」


「えっ、何それ…」


驚いて聞き返すとなっちゃんは何故か得意気に言った。


「毎日のように凌ちゃん膝の上に座らせてるからなんか分かる!」


そう言ったなっちゃんの言葉に雅ちゃんが爆笑して言う。


「そんな特技いらないでしょ!」


「そうだよ!なんか恥ずかしいじゃん!」


照れたように言うあたしを見てなっちゃんは「もっと食え!」と笑っていた。