それが君の願いなら。



「あ〜!早く帰りたい…!」


「やばい…この御時世にCDプレーヤーないとか、ダメ!」


「ふふふー!」


「………」


3人それぞれが欲しいものを手に入れ、今はテントの中。


あれから好きなものを取ったはいいけど、もちろんこの場でその全てを行えるはずもなく…。


みなさん、耐えてます…。


「そんな涼しい顔した本人はいったい何取ったのー?」


「ん? あたし?」


興味津々に聞いてくるなっちゃんはあたしの手元を覗き込む。


「別に普通だよー?」


そう言ってあたしが見せたもの。


「「「……アニメのDVD全巻セット」」」


「他に欲しいのなかったからねー」


あははっと笑うあたしを3人はジーッと見つめてくる。


ん? 3人共、どうしたの?


あたしの心の問にハモりながら言う。


「「「それがギャップか…」」」


「へっ? ギャップ? なんの事??」


ってか、あたしのどこにギャップが?


そう思って3人を見たけど、何も答えてくれなかった。


もっと言うと、手に入れた物に夢中でみんな幸せそう。


ゲームだったりアルバムだったり、クリアファイルだったり…。


本当にそれぞれの趣味をちゃんと理解してる先生にあたしは驚いた。


今日の出来事を言い返せば、先生たちはあたし達生徒のことをしっかり見てくれてるって事だと思う。


他の学校だったらこんな事ないと思うもん。


先生は生徒をちゃんと見てる。


どこの学校も同じだなんて言えないと思うからこそ、あたしはこの学校で良かった。


「――体育会系オタク先生、ちょっと好きになったよ」


あたしの言葉に3人はニコッと笑い、頷いて見せた。


ほら、先生。


先生があたし達生徒をちゃんと見てくれたから、あたし達も少し変わったよ。


――…宿泊研修最終日の明日。


テントから出て少し星空を眺める。


「侑京くん……、会いたいですね」


あたしの言葉は、夜空へ消えた。

.