テント張りを終え、少し休憩。
あたしは殆ど何もしてないから、そこら辺をぶらぶらしてこようかな…。
「樹英、なっちゃん、雅ちゃん。あたしちょっと散歩してくるね」
3人に声をかけると「すぐレク始まるよ?」と言われたけど、まぁ大丈夫。そんな遠くまで行かないし。
そんな意味を込めて手を振る。
――…それにしても。
「宿泊研修で何もない場所なんて…」
何が面白いんだろう? 先生たち、もう少し考えてよ…。
いくらなんでもこれは酷いよ?見るからに山しかないもん。
逆にこんな場所よく見つけたよねって感心しちゃうくらい。
でも、たまにはいいのかな…。
考え事ばかりしてるからなのか分かんないけど、なんだか頭が痛い。
あたしが悩むなんて変なのかなー……。
ふと見上げた空は雲一つなく、本当に綺麗で。悩んでることさえちっぽけに思えてくるから不思議。
だけど、こんな綺麗な空を見てるとどうしても会いたくなる。
「侑京くん……」
会いたい。
会いたいよ…。
溢れそうな涙を堪え静かに目を閉じた。
初めて話したあの日の笑顔が瞼の裏に焼き付いてる。
あぁ、もう…。あたしいつからこんなに侑京くんのこと好きになってたんだろう…?
自分でも気付かないくらい自然と惹かれて、自然と好きになってる。
会いたい気持ちが溢れ出す。
「会い…ったい…」
言葉にすればするほど会いたくなるって解ってるのに…。どうしてあたしはこんなにバカなの?
もう、ダメだ…。
好きが、溢れる。
早く、早く、この気持ちを侑京くんに伝えたい。
フラれたってあたしは侑京くんが好き。誰より好きなの。
溢れる想いも、涙も、全部全部侑京くんが好きだからで。
「戻んなきゃ……っ。」
ジャージの袖で涙を拭い、あたしはみんなのいる方へ戻った。いつもの笑顔で。心配かけないように。


