それが君の願いなら。



宿泊研修当日。


まさに研修日和と言うような快晴の今日。


「樹英! 最初何するんだっけ?」


各クラスで集まり、またその中からいくつかの班に別れて色々な事をする宿泊研修。


あたし達2年A組の学級委員である樹英に聞いてみる。


「まず最初にそれぞれの班でテントを建てて…えっと、それからレクリエーションだったと思う!」


……テント建てにレク、ね。


「ありがと。じゃあ、建てる?」


あたしの言葉に樹英は面倒くさそうな顔をしながら頷いた。


樹英は可愛くて勉強も出来るけど、運動はちょっと苦手。なんでも引き受けてる姉御肌に見えて実はかなりの面倒くさがり。


学級委員になったのはクジ運がなかったから。


だけど、やるって決めた事は最後までやるし責任感だってある。


周りのこともしっかり見てる。


ただ樹英は……。


「ねぇねぇなっちゃん。この釘何?テントに釘打つの?」


「樹英ちゃんバカっ!これはテント抑えるやつじゃん!」


「へーっ!どこに打つの?中?」


……かなりの天然。


どこにいても絶対1回は躓くし、コケる。


しかも何もない所で。


それが天然かって聞かれるとよく分かんないけど。


言葉の間違いだってよくある。 んー…例えば、『洋楽(ようがく)』の事を『洋楽(ようらく)』だと思ってたり…。


初めて知った時の樹英は小学生みたいに驚いてて、あたしやなっちゃんはとりあえず笑った。


バカだなーって思いながら、やっぱ樹英は可愛いんだなって思ったりもした。


こんな可愛くって面白いのに、周りの男子は樹英を放っとくから今の彼氏に取られるんだよ。……なんて。


「あ、凌ちゃん!その部品こっち!」


ボーッとしてたあたしになっちゃんが素早く教えてくれる。


「あっ、ごめん! ってかあたし、さっきからボーッとし過ぎだよね!」


「うん、し過ぎ。どうした?体調悪い?」


「……ううん、大丈夫。ありがと」


そう言ってテントを組み立てていく。


それにしても。先生も男子も来ないなんてちょっと酷い。女子だけの班でテント張るなんて無謀だと思わないのかな…?


思わず出そうになった文句を喉に留めておく。


もしかして忙しいのかなって思ったから。


「みんな!もう手放していいよ!」


そう言った樹英の言葉通りみんな手を放す。 そこにはしっかり張られたテント。 ……あ、あたし、本当に何もしてない!


先生や男子に文句言う前に自分だよね、なんて思いながら反省中。