「お前ら決まったかー?」
担任の声で、手元にある栞をもう一度眺めた。
そこには【2年生!春の宿泊研修!】と書かれてある。
あたし達の学校ではそれぞれの学年時に宿泊研修があり、行く場所もそれぞれ違う。
する事も違うって聞いてあるけど、本当のところは似たり寄ったりだとか…。
そして今はその宿泊の際の班決め。
男女それぞれ4人ずつとなっていて、あたし達はいつもの3人と仲が良い雅(みやび)ちゃんの4人で班を組んだ。
「安岡ー、決まったか?」
学級委員の樹英が呼ばれ、3人で話し込む。
「宿泊研修なんて毎年する必要ないのにね〜!」
「夏実ちゃんに同意!1年の時はウォークラリーとか言って時間競うだけだったしね!」
愚痴をこぼすなっちゃんと雅ちゃんの話を笑いながら聞くだけのあたし。
基本聞くばかりで自分の話はあまりしない。
……って言うよりは、"出来ない"って言った方が正しいのかも。
あたしの話のせいで周りの空気や雰囲気が悪くなっちゃうかも…って思うと、どうしても話す気になれないから。
今だって愚痴ってる2人だけど、雰囲気が悪いわけじゃない。
だからこの雰囲気を壊しちゃうのは嫌。
そんな事を考えながら話を聞いていると、雅ちゃんが何かを思い出したように言った。
「そう言えば凌ちゃん、侑京くんと何かあった?」
「…へっ? さ…っ、侑京くん??」
いきなり出た侑京くんの名前に内心動揺するあたし。
なるべく顔に出さないよう努めるけど、なっちゃんも雅ちゃんもどこかニヤニヤしてる…。
この2人もしかして、グル……?
「この前、まーくんと一緒にいる時に会ったの」
「"まーくん"って、テニス部の三原くん?」
「そうそう!後輩! 2人仲良いらしいよ〜」
雅ちゃんの言葉に首を傾げる。
なんであたしにそんな事言うんだろう…?
雅ちゃんとは高校から知り合って、1年の時から同じクラスで仲良いけど、侑京くんの名前を聞いた事はない気がする。
もしかして、好き…なのかなぁ……?