それが君の願いなら。



……まったコイツは…!


「――っい!…たい! うっちゃん!?」


「将貴お前…口軽すぎ。 自分で分かってねーだろ……?」


殴った俺をうる目で見てくるが、そんなの気にならない。


コイツ、まじで覚えてろよ……。


俺の怒りを察したのか、小さくごめんと謝ってくる。


そんな俺たち2人のやり取りを見ていた先輩はクスクスと笑う。


「あははっ!……あ、ごめん!」


「や、大丈夫ですよ。全部将貴が悪いんで」


俺の言葉に「えっ」と声を漏らしている将貴。 俺はもう一度睨み、「ちょっと黙ってろ」と目を訴えた。


大人しくなった将貴を確認し、俺はこの際だからと先輩に質問する。


「あの、ちょっといいですか?」


「ん? あ、凌ちゃんの事?」


「はい。仲良いんですか?」


「まぁねー。もしかして、凌ちゃんの事…?」


俺の気持ちを察した様子の先輩はニヤりと笑いながら聞いてくる。


一瞬迷いながら、友達なら別に良いかと思い、素直に答える。


「はい。実は…。」


俺の答えに先輩はどこか嬉しそうな笑顔で言った。


「…そっか!凌ちゃん良い子だしね。告る予定は?」


「予定はまだ未定です」


「タイミングって大事だもんね〜! けど、この学校の有名人2人が付き合い出せばそれぞれのファンが泣いちゃうかもしんないよ?」


そう楽しそうに言ってくる先輩。…いや、実際楽しんでる部分はあるんだろうけど。


「勝手に泣いてくれればいいですよ。」


「……相変わらずドライなんだね、侑京くん」


「よく言われますが、凌先輩以外の人だけですよ?」


そう言った俺の言葉に先輩は声を出して笑った。


「なんか凌ちゃん以外が特別みたいな響きだね!あはは!」


それは絶対にないです。そう言って俺たちは話を切り上げそれぞれの教室に戻る。


俺の特別は凌先輩だけ。


気付けば好きになっていて、気付けば目で追うようになっていた。