それが君の願いなら。



成の話を聞いてから数日。


凌先輩と廊下ですれ違う事が多くなったように感じる。


俺の気のせいって言われるとそれまでなんだろうけど…。


「なぁなぁうっちゃん」


「……あ?」


「凌先輩に告んねーの?」


「……将貴、お前どんだけバカなの?」


将貴の質問に呆れながら俺はため息をつく。


告るにも段階があんだろ? 俺だってフラれたくねぇし…。


「でもでも、先輩とは友達になったわけだし、イケんじゃね?!」


……なるほど。そうか。分かったぞ将貴!


「お前は友達だったら誰に告ってもOKされると思ってんのか? ――アホ!」


俺の言葉に将貴は「…うっ!」と言いながら心臓を抑えている。


ったく…。バカなのも大概にしろよ……。


そんなんでOKされんなら今すぐにだって告ってる…とは、言えねぇか……。


成から聞いた先輩の過去。


それが全てだとは思ってないし、どこまでが本当でどこまでが嘘なのかも分かんねぇ。


先輩に直接聞きたいとこではあるが、昔の古傷を抉って嫌われたらマジで凹むし…。


「あ、雅(みやび)ぃー!」


いきなり叫んだ将貴の目線の先には、同じ部活の先輩がいた。


―――……あれ?


そう言やあの先輩、凌先輩の仲良くなかったか…?


見た目がクールな凌先輩は、意外と明るくてよく笑う人だと最近気付いた。 それと同時に、かなり顔が広い。


そのせいか友達も多く、同学年の人は男女問わず仲良いと思う。


「あー、まーくん!」


「雅何してんのー?」


「今、移動教室だから」


話している2人を見ながら考え込んでいると、将貴が何かを思い出したように俺に言う。


「あ、うっちゃん。そう言えば雅、凌先輩と仲良いよー?」


将貴の言葉に先輩は「え、凌ちゃん?」と目を丸くさせていた。