初めまして。


あたしのこの気持ち。


気付いてるよ。分かってるよ。榊くんが気になるの。でもね、それだけじゃないって事も分かってるんだよ。


……ただ、認めるのが怖いだけ。


あたしが榊くんを好きになって。榊くんがあたしを好きになってくれたとして。


もう、あんな思いはしたくないし、してほしくないよ。


臆病なあたしは、いつも一歩踏み出せないんだ…。




あれから数日が経って、あたしは何度か榊くんと会った。


廊下ですれ違ったり、放課後一緒になったり…。


その度に榊くんは「先輩」って声をかけてきてくれた。


誰と居ても声をかけてきてくれるから、なんだか恥ずかしくなるのはいつもあたし。


樹英たち4人といても、他の友達と廊下を歩いてても。


いつだってあの優しい笑顔であたしの名前を呼んでくれる。


それだけでも嬉しくて、幸せな気分になる。


――そんな時だった。


「あ、凌ちゃーん!」


樹英とトイレから戻ると、なっちゃんがあたし達の元へ走って来る。


「なっちゃん、どうしたの?」


なんか急いでる? ってか、教室で待っててくれれば良かったのに。


「もう!急いで!」


「は? …っえ、ちょっと!?」


なっちゃんはあたしの手を引き1年生の教室の方へと走る。


「え、ちょ! なっちゃーん!? 凌ちゃーん!?」


遠くから樹英のあたし達を呼ぶ声が聞こえるけど、反応なんて出来ない。


走る、走る、走る。


1年教室ってこんなに遠かったっけ…?


「ちょっ…はぁ…なっちゃんっ……!」


「っ凌ちゃん! ここ…っ!」


そう言ってなっちゃんが立ち止まった場所は、


「1年A組…?」


なんで1年A組? あたしの考えが分かったのか、なっちゃんはニヤリと笑った。


「榊くん、さっき教室来てたのに、凌ちゃんいないから帰っちゃったんだよ!」