それが君の願いなら。



「……? あの、」


「…………へっ、!?」


「先輩、ですよね?」


「え、あ、うん…?」


「この前も目合いましたよね?」


「………うん…」


あれ、あたし。榊くんと話してる…?


って言うか、なんか…話しかけられた?


「先輩?」


「あ、はいっ!」


ヤバイ……!あたし完全に挙動不審だ…! 絶対榊くんに変な人だって思われた…。


友達に助けを求めようと隣を見たけど、一緒に来たはずの友達はどこにもいなかった。


あ、あれ? もしかして、あたしを置いて1人掃除場所に行っちゃった…?


ひ、ひどい……。


頭の中はもう爆発寸前。そんなあたしを見て榊くんはクスクス笑ってる。


その笑い方でさえなんだかカッコ良く見えちゃうんだから不思議だね。


「…って!えぇ!?」


「ふっ。先輩さっきから大丈夫ですか?」


「いやいや…限りなく榊くんのせいなんですが…。」


「へ?俺??」


しまった。なんでこんな時だけ口は勝手に動いちゃうんだろう…。


慌てるあたしは目線を反らしながら「ごめん、なんでもない」と言うのが精一杯だった。


「ってか、名前。知っててくれたんですか?」


名前……って、榊くんのってこと?


知ってるも何も、あなた。


「この学校の有名人じゃないデスカ」


あたしは知らなかったけど。つい今朝まで。


なんか、申し訳ないよね。ごめんなさい…。


勝手に下がっていく首をあげたのは榊くんの言葉だった。


「梅原先輩ほど有名ではないですけどね」


「えっ」


「先輩、自分が有名人だった知らないんですか?」