それが君の願いなら。



朝の出来事からあたしは1日中いつも以上にボーッとしながら過ごした。


授業なんて頭に入んない。


1日中寝てるフリをして過ごした。


あたしって、こんなにも分かり易い奴だったんだね…。


そんなこんなで午前中の授業が終わった。


あたしは侑菜の元へ急ぎ、今日の出来事を話すつもり。


お弁当はそれぞれが違う場所で違う友達と食べてるから、4人になることはない。


あたしはずっと侑菜と2人で食べてるんだけど。


「お昼、食べよ」


そう言っていつもの侑菜の席へ行く。笑顔で手を洗いに行く侑菜を見てると、なんだか言いにくくなる。


……けど、言わなくちゃ。


逃げてちゃダメなんだから。


戻って来た侑菜にあたしは早速話を始めた。


「ね、ねぇ、侑菜。あたし、気になる人が出来た…」


そう言ったあたしに一瞬、驚いた顔を見せた侑菜。


そして、穏やかな顔で、


「そっか…。良かったね。頑張れ!」


そう言ってくれた。


それだけの事であたしは泣きそうになる。弱い自分を見せたくなくて、泣いてる姿を見せたくなくて、「ありがとう」って笑って見せる。


あたしはまた、誰かを好きになってもいいんだって、そう言われた気がしたよ…。


誰かを好きになることを許してくれた人が樹英たちで良かった。


ありがとう――…。




《掃除の時間になりました―――……》


放課後の清掃時。


あたしは友達とそれぞれの指定された場所へ向かう。


放課後に掃除なんて面倒。だけど、これが終わればあとは帰れるんだし、もう少しの辛抱だよね…!


同じクラスの友達と話しながら1年の教室の方へ向かう。


階が違う2年のあたし達が掃除をしなくちゃいけない理由も分かんないけど。


そんな事を思って廊下を歩いていた時。


「――…っ」


あの男の子と、すれ違った。


1年の、榊くん。


……本当に整った顔してるな。 そりゃあモテるよね。こんだけカッコイイんだもん。


カッコイイけど、可愛い系の顔。


何も知らないからこそ、ちゃんと知りたいと思った。


榊くんに、近付きたい…。