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――――――……
大好きだった。
誰より愛しくて、好きで、ずっと一緒にいたかった。
忘れた事なんてない。
これから先も、一生忘れることはないと思う。
それくらい大切で、世界で一番愛した人…。
だから。 世界で一番愛してるから、あたしは側にいられないと思った。
一緒にいて幸せだと言ってくれた。
あたしだって同じように、それ以上に幸せだって思ってた。
……だけどね、ずっと一緒にいても大切にできないの…。
そう、感じてしまった――…。
一目惚れして、付き合って、別れて、後悔して。自分の愚かさを恨んだ。自分の身勝手さに嫌気がさした。
莉人くんがあたしと別れて後悔したように、あたしもすごく後悔したの。
侑京に惹かれたけど、周りが言うことはほとんど一緒。 "侑京くんって、莉人くんと似てるね"。"2人共同じ雰囲気だよね"。
そう言われる度に否定してきた。
侑京は莉人くんとは似てないよ。
―――でもね、本当は気付いてた…。 初めて侑京を見た時、クラスメイトに似てると思う前に……莉人くんと似てること…。
話し方も、歩き方も、身長だって全然違うのに、雰囲気がとても似てた……。
侑京の周りにいるだけで莉人くんが浮かんで、泣きそうになったりして。
近くにいちゃいけない。
そう思う前にあたしは侑京に惹かれてしまっていた。
莉人くんと似てるからとか、そう言うのは分かんないけど。
………でも、本気で好きだと感じたのは嘘じゃないよ。
侑京には最後の最後になっちゃったけど、莉人くんと重ねちゃっててごめんなさい。
莉人くんを忘れられなかったあたしを許さなくていい。
だけど、本当に好きだったことは、どうか知っていて……。
侑京に言った言葉も、想いも、全部全部嘘じゃないから。 侑京に会いたくて、恋しくて、愛しくて流した涙も、全部全部嘘なんかじゃない……。
本当に、心から愛していたの――。
ただ、あたしが自分の気持ちにハッキリ区切りを付けられなかった、それだけなの…。
どうして侑京じゃダメだったのかな…。
どうして莉人くんじゃダメなのかな…。
――何度考えても、行き着くのはいつも同じ答え。
"あたしが2人を幸せに出来ない"
"好きだから、側にいられない"
なんて簡単で悲しい答えなんだろう……。
自分でも解ってるはずなのに…。
莉人くんといても、侑京といても、あたしは心から幸せだって言えるのに……。
もう一人のあたしが、そんなの許さないって言ってる…。
だからね、2人には誰より幸せになってもらいたいの。
誰より2人を愛してくれる人と一生一緒にいてほしいの。
あたしなんか忘れてくれていいから。
2人の未来にあたしがいなくていいから。
―――だから、どうか、絶対に、幸せでいて下さい……。
それが、それだけがあたしの願い。
莉人くんと会うことはこれからもあって。
侑京とだって学校で嫌でも会うと思う。
だけど、もうダメだから……。 あたし達は、なんの関係もないんだから……。
今まで通り笑っててよ。
莉人くんの優しさに救われるのはあたしだけじゃないはずだから。
侑京の笑顔で幸せだと感じる人はあたしだけじゃないはずだから。
だから、ね―――……。
「誰よりっ…幸せでいて……っ」
あたしの願いはきっと叶うよね。
一緒にいられないけど、大丈夫だよね…。
莉人くんなら、侑京なら、ずっと笑顔でいてくれるよね…?
きっとこの世界で、この宇宙で一番幸せだったあの瞬間たち。
莉人くんがあたしといて幸せだったと言ってくれたように、あたしもすごくすごく幸せだったよ。
これからはそれぞれの道を歩むけど、あたしはもう泣かない……。
2人を想っても、会いたくなったとしても、もう、大丈夫……。
サヨナラ、愛した人。
サヨナラ、宇宙一幸せだったあたし。
もう戻れないから。
あの日のあたしに、君に、サヨナラ――。
【 END 】