頭が付いていかないあたしはなっちゃんに質問の嵐。
「榊くんって、あの榊くん?」
「そうそう!あの榊くん!」
「凌ちゃん、好きなんだね〜!」
樹英の一言にあたしは思わず下を向く。
「好き、かどうかは、まだ分かんない。…けど、気になってるのは本当。」
そう言ったあたしを、なっちゃんと樹英は優しい顔で見ていた。
何も言わないけど、2人が「大丈夫」って言ってくれてる気がして、なんだか泣きたくなった。
「侑菜ちゃんには言った?」
樹英の言葉に首を横に降る。
「まだ。お昼に言おうかなって」
「そっか。まぁ、大丈夫だよ!」
「…うん、ありがとう。樹英」
そう言うと樹英はまた、優しく笑ってくれた。
―――大丈夫。大丈夫だよ。
だって、あたしも侑菜も、もう大人なんだもん。
もう、昔みたいな事にはならないって、信じてるから…。
「ねぇ、凌ちゃん」
そんな事を考えていたあたしの耳になっちゃんの声が届く。
「ん?」
「今言うのってどうかと思うけど、榊くんって、あの人に雰囲気似てない…?」
「――えっ?」
なっちゃんの言葉に声が言葉が詰まる。
……似てる? あの人に?本当、に…?
じゃああたしは、またあの人の面影を探してるってこと…?
あぁ、ダメだ。分かんない。
頭がクラクラして来る。似てない。違うよ、多分。
そう言いたいのに、なっちゃんの言葉に呼吸する事さえ忘れてしまいそう。
「凌ちゃん!大丈夫!違うよ!」
樹英の言葉にハッとして、気が付けば涙目になってる自分がいた。
「もう!なっちゃんもこんなトコでそんな事言わないの!」
「ごめん…。そういうつもりじゃなかったんだけど…」
申し訳なさそうにそう言うなっちゃんを見てると、こっちまで申し訳なくなる。
「ごめんね、なっちゃん…」
「凌ちゃんは謝らなくていいよ。今のはうちが悪かったもん」
そう言って微笑んでくれるなっちゃんに心の中でもう一度謝った。


