侑京と別れて真っ直ぐ家に帰った。
本当はこのまま莉人くん家に行くつもりだったんだけど、こんな顔じゃ行けないと判断したから。
思ってた以上に腫れた瞼。
流石にこの顔で行くのはダメだ…。下手すれば莉人くんだけじゃなくて麻衣ちゃん達にまで心配かけちゃう……。
コンビニで買ったペットボトルのお茶で目を冷やしながら家に帰り、そのまま部屋に直行。
お母さん達には玄関から帰ったことを知らせただけだから、心配してるかもしれない……。
だけど今は早くこの瞼をどうにかしないと…。
壁掛け時計に目をやれば、まだ18時を過ぎたばかり。
――今日中に莉人くん家行けるかもしれない…!
淡い期待を抱きながら目元を冷やし続ける。
今日行かなきゃいけない、と自分の中の何かが急かしてくる。
……あ、でも家行く前に莉人くんに連絡しておかないと…。
リュックに入れっぱなしのスマホを取り出しLINEを送る。
《急にごめんね。 今日行ってもいい?》
送信、と……。
ベッドに寝転びながらスマホを枕元に置いた。
莉人くんに言いたいことはもう決まってる。
………昨日からずっと考えてもん…。
って言っても、昨夜莉人くん達はうちに泊まってたんだけど…。
悠ちゃんに「りっくんと寝る?」って聞かれた時は流石に何も言えなかったけどね……。
意地悪くあんな事言ってくる悠ちゃんはホント莉人くんに似たな。
思い出しながら1人静かに笑う。
「そろそろ腫れも引いたかな…」
のそりと起き上がり鏡に自分の姿を映す。
暗くてあまりよく見えないけど、大丈夫、だと思う。
スマホを手に取れば莉人くんから返事が来ていた。
《いいよ。 迎えに行く?》
《大丈夫、ありがと。 今から行くね》
《分かった、気を付けて来いよ》
《うん》
すぐ返事をしたあと私服に着替える。
薄手の長袖にパーカーを羽織り、スキニーに履き替えた。
リビングに行けばお父さんはいなくて、まだ帰ってきていない事を知る。
「具合でも悪いの?」
「ううん。 今から莉人くん家行ってくるから、夕飯帰ってからにするね」
「莉人に迎えに来てもらうの?」
「1人で行く。 行ってきます」
「行ってらっしゃい。 気を付けなさいよ」
お母さんに頷き玄関に急ぐ。
莉人くんに会いたい。
莉人くんに言わなくちゃ。
色々な思いが駆け巡り、あたし自身を急がせる。
莉人くん家までは歩いて5分くらいだし、まだそんなに暗くもないから大丈夫。
ちょっと怖いけど、走ればあっという間だよね。
外に出た瞬間走って莉人くん家に向かう。
言いたいこと全部言えるかな…。
ちゃんと、莉人くんに伝わるかな…。
もし伝わらなくても、何度だって言う。伝わるまで、何度も何度も。
侑菜が頑張れって、侑京が幸せでいろって、あたしの背中を押してくれたから。
だからあたしは前に進むよ。
いつもなら長く感じる莉人くん家までの道のりが今日はあっという間に感じた。
―――ピンポーン…
「はいはーい……って、凌?」
出てきた麻衣ちゃんに「お邪魔します」と笑いかけて家に上がらせてもらう。
「……リイ?」
何かを察した様子の麻衣ちゃんがあたしに聞いてきたから頷いた。
「リイなら部屋にいるよ」
「うん、ありがとう」
一応お礼を言い莉人くんの部屋に向かった。