――――……
落ち着かない1日が終わりもう放課後。
1人図書室で侑京を待っているあたしは侑京と付き合い出してからの事を思い出す。
侑京に一目惚れをして。
あの黒くて綺麗な瞳が本当に好きで。
なっちゃんや雅ちゃんに色々聞いたんだよね…。
あたしどれだけ必死だったんだろ。
今思い出すと思わず笑ってしまうほど。
侑京の事をなっちゃん達から聞いていくうちにどんどん惹かれていった。
話したこともないうちからあの人のオーラに魅了されてたんだと思う。
初めて話した廊下からの一件、仲良くなるまでに時間はかからなかったように感じる。
あたしはどんどん侑京にハマっていった。
告白するって決めたあの日、緊張しすぎて言葉が出てこないあたしに逆告白された。
嬉しかった。
泣くほど嬉しかった。
莉人くんとの事があって正直もう恋なんてしない、したくないって感じてた部分もあったから……。
そう思ってたのに今あたしがこうしていられるのは侑京がいたからなんだよ。
だから本当に感謝してる……。
あのね侑京。
あたし言わなくちゃいけないことがある。
昨日気付いたんだ―――。
侑京が来たら、ちゃんと言うから。
あたしの言葉を聞いても、泣かないでいて下さい。
「――ごめん凌っ、待たせた!」
「ふふっ、大丈夫だよ」
慌てた様子で図書室に来た侑京に笑いかける。
走ってきてくれたのかな、額に汗が滲んでる。
それだけの事が堪らなく嬉しくて、顔が自然と綻んだ。
「……で、急にどうした?」
呼吸を落ち着かせながらあたしの隣に腰を下ろす。
侑京の言葉にあたしは深呼吸を一つ。
「―――……今日はね、話があるの…」
「…うん」
「大事な事を言わなくちゃいけないの」
「……おう」
横から感じる侑京の視線が痛い。
きっと分かってるんだと思う、あたしが今から話すこと……。
「あのね、侑京…あたしね…」
ゆっくり話し出すあたしに侑京は黙って耳を傾けてくれてる。
「―――っごめんなさい…」
「………」
「すごく今更だけど…気付いたの…」
「……うん…」
あたし、ね……。
「っ、」
言葉が出てこない――…。いつも大事なところであたしは何も言えなくなる。
それはあたしの弱さであって、大切な人の反応が怖いから。
でも、それは今日までって決めた。
あたしは、大切な人に自分の口から大切事を話せる人間になりたい――。
だから、ゆっくりだけど、聞いてて欲しい……。
ちゃんと、自分の言葉で伝えるから……。既に泣きそうになってるあたしだけど、ちゃんと、侑京に伝えるから……。
2度目の深呼吸をしたあたしは侑京を見た。
「―――あたしは、侑京に莉人くんを重ねてた…」
「……っ、うん」
あたしの言葉に眉根を寄せた侑京。
ごめんね。傷付けるって分かってる。だけど、どうしても言わなくちゃいけないと思ったの…。
あたしを恨んでいいよ。
憎んでいいよ。
だけど、どうか泣かないで――。
「……侑京…あたし達…別れよう……っ…」
「―――……っ…」
侑京にはずっと笑ってて欲しいの…。
「あたしは侑京がずっと好きだった、大好きだった…。本当だよ…嘘じゃない……だけど、ごめんなさい…」
きっと侑京に一目惚れしたのは、莉人くんと似てたから……。
その大きな手が、優しい目が、あたしを呼ぶ声が――。
もう誰も苦しめたくない。
もう誰も犠牲にしたくない。
あたしは、1人でいいんだ――…。


