それが君の願いなら。



翌朝。お母さんの声でいつものようにダラダラと起きる。


朝は嫌い。今は春だからまだ良いけど、冬なんて以ての外。寒くて布団から出られないもん。


「凌〜?遅刻するわよ〜?」


「はーい……」


ダルイ体を起こし、学校に行く準備を始める。


いつもと何も変わらない今日。ただ一つだけ違うとすれば、あたしの気持ち。


早く、早く、あの子に会いたい…。


「名前、なんて言うのかな…」


小さく呟きながら朝の占いをボーッと見る。


あ、あたし今日3位だ。……良い事あるのかな?


「凌っ!遅れるって!」


お母さんの言葉にハッとし、急いで最終チェック。


「…よし!行ってきます!」


「行ってらっしゃーい」


慌てて玄関を出れば太陽が眩しい。


あぁ、やっぱり今日は何か良い日になりそうな予感。


小さな期待を胸に、あたしは学校へと急いだ。




「お、はよっ!」


「おはよ。凌ちゃんがギリギリって珍しいね?」


教室にギリギリで入ったあたしになっちゃんが聞いてくる。


「なんか、ボーッとしてたら遅くなった…」


「あはは!それは通常通りなのにね!」


「考え事とかしてたのー」


「「考え事?」」


あ…ヤバっ……。 いつの間にかなっちゃんと一緒になって話を聞いていた樹英まで食いついて来た。


樹英にまで食いつかれたらあたし逃げ場ないんだけど…。


まぁ、でも、いつか話すつもりだったし、今話せばいっか。


そう思いあたしは2人にあの男の子の事を話し始めた。




「……へぇ〜!なるほどね〜!」


あたしの話を聞き終えたなっちゃんが楽しそうに頷く。


「その子うち分かるよー?」


「「えっ!?」」


あたしと樹英はなっちゃんの言葉に驚きながらも食い付く。


え、待って待って。なっちゃん、まさかの知り合い?


「大翔(ひろあき)と雰囲気似てるって言えば、榊(さかき)くんでしょ〜」


大翔くんは田辺くん。


なんだけど……。


「え…さ、榊?くん??」