それが君の願いなら。



+++ side 莉人 +++


凌ちゃんが苦しむ事を分かっていながら自分の本心を伝えた。


ずっと昔から凌ちゃんだけが好きなんだ。どうしようもねぇじゃん…っ。


人見知りな俺が唯一仲良くなった女の子。


女子の中で一番仲良くて、気が合って、一緒にいるとすげぇ楽しくて。


凌ちゃんといる毎日が当たり前になると同時に、自分でも気付かないうちに惹かれて好きになってた。


他の女子なんて興味なくて。


正直侑菜ちゃんを好きだと思ったこともなかった。俺には凌ちゃんがいればそれで良かったんだ。


付き合えたあの日を忘れたことだってない。


今までにないくらい幸せで、愛しくて仕方なかった。


ずっとずっと凌ちゃんと過ごして当たり前みたいに側にいると思ってた。


―――そんな幸せな毎日を壊したのは俺自身。


泣かせないと誓ったのに。


側にいると思っていたのに。


他の誰でもなく、俺が、凌ちゃんを傷付けたんだ……。


だからと言ってあの時の俺に菜乃花を放っておく事は無理な気がする。


菜乃花には色々と弱みを握られてたしな…。全部凌ちゃんに関係している分余計に放っておくなんて無理だったんだ。


それが裏目に出るとも知らずに。


いくら鈍感な俺でも菜乃花からの好意に気付かないわけなかった。


それくらいアイツは分かり易くて。俺が凌ちゃんを好きな事知ってて、凌ちゃんの前でわざと絡んで来たりもしていた。


凌ちゃんが俺を好きとか思わなかったし、普通にヤキモチ妬いてくんねえかなーって思ってたくらいで。


普段から優しくて人に当たったり自分の思ってること上が手く言えないタイプの凌ちゃんからすれば、菜乃花の行動は全部計算の上だったのかもな…なんて。


どっちにしろ俺が凌ちゃんを傷付けたことに変わりはない。


菜乃花は関係ない。そう思うしかないんだよ……。


俺が悪かった。今更そう言ったところで何かが変わるわけでもないけど。


今も昔も凌ちゃんを苦しめて泣かせて、俺は何してんだよ……っ。


「侑京が、いんだろ……」


呟いた言葉は凌ちゃんの部屋に溶け込んでいくような気がした。


泣き疲れたのか眠ってしまった凌ちゃんに布団をかけながら、その寝顔を見て微笑む。


いつでもどこでも場所や時間の関係なく眠ってしまう凌ちゃんを無防備だと思いながら。


……そう言えば俺ん家でもよく寝てたよな…。


悠斗と一緒に3人でゲームしてた時も。2人で勉強してた時も。


いつだって欠伸が絶えない凌ちゃんの口癖は「眠い」だった。


溜め息をつきながらも毎回「ちょっと寝れば?」なんて言ってた俺は相当甘いのかもしれない。


でもそんな俺の言葉に嬉しそうに笑う顔が可愛くて。


「……へへっ、おやすみぃ〜」


そう言いながら無邪気に、無防備に俺のベッドへ潜り込む凌ちゃんが好きすぎて。


何度もどかしい気持ちになったんだろうか。


付き合う前も付き合い出した後も変わらないその行動。


可愛いと思いながら無邪気過ぎるその行動に理性を保つ事に必死だった。


涙の跡が見える頬をスーッと撫でれば小さく反応する。


そんな事さえ愛しく感じる俺は前より重症かもな……。