だから、そんな泣きそうな顔しないで…っ。
「凌の幸せを一番に願いたいくせに、俺は結局自分の事しか考えられねぇんだって、改めて感じた…」
「っそんな事ない! 侑京はいつだってあたしの事を思ってくれてる」
「……凌がそう感じてくれてんならそれでいい。凌の為になってんなら、嬉しい」
弱々しくそう言う侑京なんてらしくないよ。
もっと堂々としてるのが侑京でしょ…?
今度はあたしが侑京を抱き締めたまま話し始める。
「あのね侑京、あたしもちゃんと言うねをごめんね、隠しておいて…」
「何を、」
「莉人くんと3人で会った時、莉人くんとキスしたの……」
あたしの言葉に侑京は息を呑んだ。
「ごめんっ、なさい……。あたし、自分がされて嫌だったことっ……、莉人くんとっ、」
侑京を抱き締めたまま泣きじゃくるあたし。そっと離れた温もりはやけに寂しくて、ツラくて、胸が傷んだ。
もしここで侑京に別れを切り出されてもおかしくない。
やっぱり無理だって言われても大丈夫なように腹を括る。
だって、あたし、本当に。どれだけ最低なの……っ。
黙っておくこと自体最低なのに…。
泣きすぎてぐちゃぐちゃな顔のあたしに侑京が言った。
「それでも、凌は俺を選んでくれたじゃん」
「………っ」
「キスなんて俺と凌はこれからもいっぱいする。凌が今俺の目の前で俺といてくれる事が真実なんだよ」
そう言って微笑んでくれる侑京の顔が急に意地悪そうな顔に変わった。
「ちなみに何回キスした?」
「……1回…です…」
「じゃあその10倍今からする」
「えっ――」
その瞬間侑京の顔が近付いて来て、あっという間に口を塞がれてしまう。
カウントなんてしない。
あたしは侑京に身を委ねた。ただ、申し訳なくて。だけど、この瞬間が愛しくて――。
結局あたしはいつもそう。
恋に依存して、溺れて、相手を傷付けてしまうんだ。
いつか読んだ本に、"誰かを傷付けない恋愛なんて恋愛じゃない"そういうセリフがあった。
あの時は深いとしか思わなかったセリフも、今となれば思うことは違う。
確かに恋愛は相手を傷付けてしまうものなのかもしれない。
だけど、そうじゃない恋愛だってあるかもしれないじゃない。
あたしのように誰かを傷付けるだけの恋愛なんて嫌だよ。
それでもあたしは侑京が好きだから、こうして求めちゃうんだ……。
依存したくない。依存されたくない。
そう思ってももう遅い。
だってあたしは、侑京に依存しちゃってるんだから。
恋愛はきっと、全てが手遅れになってから気付くものなんだ。
「侑京――」
「ん?」
「もっと――…」
「〜〜っ、もう知らね」
そう言って貪るようにあたしの唇を食べる侑京。
侑京の手があたしの制服の下に入り込んだ時、チャイムが鳴り響いた。
「うおっ! ごめっ!」
「えっ!? あ、いや、大丈夫っ!」
お互いの状況を確認したあたし達はしどろもどろ。
それでも顔を合わせて笑う。幸せなこの時を2人で過ごす。
あたし、今日が一番幸せな誕生日だよ。
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