それが君の願いなら。



――――
――…


「じゃあね、凌ちゃん!」


「バイバイ」


気付けば放課後。帰る時間。


あたしの気持ちは何一つ分からないまま今日が終わる。


樹英は彼氏の新谷(にいや)くんとクラスが違うから、たまに放課後話して帰ってる。


侑菜は進学クラスで補習が遅くまであるし、なっちゃんはバイトがあるからと言って急いで帰っていった。


あたしは部活に入ってないし、今日はバイトも休み。


久しぶりに1人で帰るとなると少し暇だな…。


どうしよう…。そのまま真っ直ぐ家に帰るか、本屋さんに寄って帰るか。


そんな事を考えながら自転車に跨った。


勢いよくペダルを踏み込み、本屋に寄ってくことにする。


いつもと変わらない毎日が、なんだか変わりそうな予感。


乙女チックなこと言ってる自分は気持ち悪いと思うけど、思っちゃったものは仕方ない、なんて諦めてみたり。


ただ、あの男の子が気になる。


田辺くんに雰囲気が似てる。


可愛い顔をしてた。


目が、合った。


それだけ。


それだけなのに、こんなにもドキドキするなんて。


ゆっくりゆっくりと漕ぐ。


今は急がなくたっていい。そう思うのは自転車のこと?自分の気持ち?


「あー……モヤモヤする…」


独り言は風に消えて、街に溶けていく。


そんなことを思っていた時。


後ろから、あの男の子が、あたしの前を過ぎていく。


本当にあの男の子なの? 今日初めて見た男の子なのに、なんで分かるんだろう…。


そう思っても、あたしの気持ちは確信に近付いてた。


あたしはやっぱり、あの男の子が気になってるんだ…。