「凛月。おはようございます。」
武市半平太先生。
あの日、とととかかを診てくださった先生だ。
「武智先生。おはようございます!何か……御用ですか?」
「いえ。凛月はいつも早くからどこかへ行っているようですがどこへ行ってるのですか?」
私はいつも❮そうじさん❯に剣術を教えて貰っていた。
誰に言われたわけでもないけれど、兄様のそばにいるには強くならなければ。そう思ったから。
「おけ……」
〝俺と稽古してることは誰にも言うんじゃねえよ〟
あ、そうだった。
「いえ、お散歩でした、えへへ」
「そうですか。頑張ってくださいね。」
そして今日もまた抜け出してそうじさんの待つ、川辺に急ぐ。
「うふふっ、少しは強くなったかな?」
兄さまに褒めてもらえるかな?
いつか兄さまの隣を歩けるかな?
そんなことを考えてるうちにもう着いたみたいだ。
「ったくおせーよ!ほれよ。」
パシッ
受け取ったのは木刀。
「待ってね、着物じゃ動けないから……」
着物の裾を捲りあげ、太ももの位置でくくりつける。