〝また、失った〟
前はいつだったか、とても遠い昔だった気がする。
目の前では親戚達が親の遺産をめぐって争っている。
お金なんていらない。
あぁ、なんて愚かな人たちだ。
世界には色がない。
「君。僕ときなよ。」
え?
絶望の深淵にいた私を拾い上げたのは青年だった。
「お、いや、僕は君のお父さんの弟で岡田以蔵って言うんだ。変でしょ?親が歴史好きでさ〜有名人の名前になっちゃったよ(笑)」
目の前で無邪気に笑う男の人。
おかだ、いぞ、う?
いぞう?
「わたし、岡田凛月。」
そう告げると目を見開いて驚いた様子の以蔵さん。
「り、つき。お前を待ってた。今度は一緒に生きよう」
え?
今度は、って、なに?
「え、あの……」
「あ、ごめん。僕何か言った?」
「いや、なにも」
これは私の頭の中で留めた方が良さそうだ