「岡田殿が捕まった?!我々も危ないのでは?!」

「だが、岡田殿がそう簡単に口を割るか?」


誰一人とて、以蔵さんの心配はしない。

その後の自分の安否。

あぁ。本当に価値のない人たちだ。


バンッ

「黙れよ。この世界に意味なんてない。あんた達なんてどうだっていい。あんた達より以蔵さんのほうがずっと必要な人間だった。」

とめどなく流れる感情。

せきとめられない。

あぁ。以蔵。会いたい。

「き、貴様っ!」

「お待ちなさい。彼女の言う通り。あなた達は少し自分のことしか見えていなかったようですね。」

「武市殿…」

「凛。宿をもう一つとっておきました。そちらへ。」

「はい。」

あぁ、あなたがいない世界はなんて残酷なんだろう。

私は1人。部屋に戻った。

そのとき、カツン…

簪が落ちた。

「この、簪。」

〝これ、買ってやるよ。可愛いよ。〟

〝凛月。好き。〟

〝お前、本当に相変わらずだなっ!〟

以蔵さん…好きです…

ポロリ…

一度流れた気持ちは止まらない。

どんどんあふれ出してくる。

「以蔵さっ、うぅっ、ふっ、ごめんなさいっ、ごめっ、なさっ、」

〝俺以外好きになるな。〟

当たり前だよ。こんな世界に以蔵さんのいない世界に意味なんてないし興味もない。