上体のみを捻った体勢でダームの拳を防ぐ。


『じゃあこの拳は…ッ!!』


歯を食いしばりながら防ぐクリスと、一方的に攻め立てるダーム。


『そーゆーこった』


歪んだ笑みを見せると、ダームの空いた左手がクリスの脇腹を捉えた。


その拳の一撃で、クリスの身体が歪んだ様に曲がった。鈍い痛みが脇腹から全身へと広がる。口には腹部からであろう血液が少し広がってきた。


『…ッ!!』


朦朧とする意識。


ダームが思い切って左手を振り切ると、クリスの身体はいとも簡単に神殿の支柱へと吹き飛ばされ、激突した。


砂煙に覆われ、ダームからクリスの姿は見えなくなる。


『あらら…
 聖地を壊しちまったか?』


クリスを殴った左手をブラブラと遊ばせながら、敵将がその支柱へとゆっくり歩き出す。


『死んだのかい?
 あ〜……名前、知らねぇや』


胸ポケットからクリスの顔写真を取り出し、ヒラヒラさせる。


すると、クリスの叩きつけられた位置で旋風が巻き起こる。


『クリス・ヴァンガードだ!!』


頭・頬・口から血を流して立ち上がるクリス。己の名を名乗ると同時に、闇の波動の混ざった気…実際は闇が殆どを占める、狭間の波動を放出した。


『聖地は守る…アンタは倒す』


そう言い放つと、今度はクリスがダームの視界から姿を消した。