captivate

今度こそ準備は整った。


クリスは覚醒した太刀を抜き、滝に向き合う。滝を一度見上げてから腕を交差させ、身体を丸める。


その刹那、剣を振り、滝に一閃を繰り出す。


パルテシオンの滝の怒号は、クリスの一閃により急に静寂を迎えた。すると直ぐに滝にX字の剣撃が走り、滝の水が綺麗に割れた。


一つには闇の波動、もう一つには光の波動が帯びていた。


切られた滝が滝壺にぶつかると同時に、再び大きな怒号が響き渡る。


その中でクリスは、闇の波動を帯びた“氷影”をしばらく見つめた後、瞬時に刀を納め、太刀の威力を見届けた仲間を振り向き、歩き始めた。


しばらく下を向いて歩き続けたクリスは、顔を上げていつもの冷静な顔をして仲間に一言だけ告げた。


『行くぞ』


その言葉に4人が返事代わりの笑みを浮かべてクリスの後を歩く。


その姿を、何千年もの長い間真実を見続けてきた龍が見守った。


ニルヴァーナに全員が乗り込み、飛空挺が空へ浮かぶ。機体はレイヴァルドを向いた。


コクピットから、5人が龍を見つめる。それに応えるかの様に、龍は空に向かい咆哮を上げた。


レオンは船首を北へと向ける。ニルヴァーナのブースターが青く光り、パルテシオンの滝から離れて行く。


『また会おう』


レイヴァルドは最後に小さくなっていく船を見てそう言った。