「クリス〜?ちゃんと仕事してるのぉ?」


「してるよ」


抱きつかれた上に、散々頭を撫でられながら問い掛けるクレア。弟は抵抗するだけ無駄だと悟ったのか、ムスっとしながら答えた。


「で?」


「なぁに〜?」


「なんで俺呼ばれたの?」


その質問にクレアが一瞬ピクッとする。


今までニコニコしてたクレアは、急に抱擁を解いてクリスと向かい合った。


「…姉さん?」


その様子がどうも気になり、クリスが声を掛ける。


しばらくの沈黙の後、クレアが口を開いた。


「本当はね、呼びたくなかったんだ…」


そう呟くクレアの表情が一瞬暗くなる。


どういう意味かわからなかったが、確かに言える事は何か重大な事が起きたようだ。


「そうとうヤバいんだ?」


姉はそれについては答えず、ただ頷くだけだった。


それだけで、この呼び出しが超機密事項に関する依頼だと、クリスは瞬時に理解した。


「龍の間に行きましょう、クリス。リノア姉さんが待ってるわ」


クレアの真剣な眼差しに腹をくくり、クリスは龍の間へと脚を向けた。