『…う』


クリスの視界にアリスの顔が映る。


『大丈夫?』


『…』


膝枕していることに気付かず、クリスは周りを見渡した。


しばらくしてから、ようやく自分の置かれている状況に気付いて、慌てて身体を起こした。


『アリス…俺…』


『しばらく気を失ってたの』


『…何か楽になった気がする』


『そう?』


『上手く言えないけどな』


そう言いながら、クリスは自分の掌を見つめた。


『クリス…
 これで目的は果たしたよね?』


『?』


『…これからどうするの?』


どことなく寂しさの篭った目が、クリスを見据える。


『アリス…?』


その眼を見て何故か切なさで胸がいっぱいになり、クリスは彼女の名を呼ぶことしか出来なかった。


『…ヨーツンヘイムに帰る』


『そっか…』


アリスが俯いて、しばらく少し強い風が吹いた。


風は一面に広がる草原を駆け抜け、アリスのセミロングの髪をなびかせた。


『アリス』


『なぁに?』


アリスの名を呼んだ後、クリスは後悔したが、言葉を続けた。


『一緒に来てくれ』