屋敷からに出る。


穏やかな陽射しが二人を照らす。


優しく吹く風の中には少し潮の香りが含まれていた。


『クリス』


『ん?』


『貴方、いつも言ってたね』


『何を?』


『俺は闇を持ってる
 もしも取り込まれたら…
 殺してくれ、ってね』


アリスはクリスに背を向けたまま、俯いた。


『…あぁ』


『私ね、思うんだ』


ぴょん、と跳びはねてクリスを向く。


『貴方は取り込まれないよ』


優しい微笑みを浮かべる。


光の様で、眩しいくらいの笑顔だった。


『…お前が居てくれるからな』


『……え?』


アリスの頬が紅に染まった。


『…どした?』


『今…なんて?』


恥ずかしそうにクリスを上目で見る。


『…別に』


クリスはわしゃわしゃと頭をかきながら答えた。


『じゃ…頼む』


頭から手を離して真剣になる。


それを見たアリスも刀を抜き、集中し始めた。


『時の霊王 天の神王 魂の冥王
 生と死を万物と為し
 空と地に恩恵を成す
 我が名はアリス・グレイシア
 神光を纏いし者の名を以て
 鍵なる光解き放たん』


アリスの刀が光る。


アリスは刀を振りかぶり、クリスを斬った。