騎士団第7部隊所属、遊撃部隊“蒼天の翼”隊長クリス・ヴァンガード。


16歳にして異例の昇進を経て、その並外れた強さから呼ばれたのは“武神”というあだ名。


極東の国“ヤマト“の剣術“双天弐刀流”を習得した若き天才だ。


彼は騎士団の中でもラフな服装をしていて、鎧などは着けたことはない。


言ってみれば、服装は騎士などから程遠い。


その理由は“ヤマト”の素早い剣を活かす為。


だから彼は騎士団の紋章の入ったジャケットと、腰には二重に巻いたベルトに二本の太刀だけを装備していた。


その格好が逆に目立つのか、すれ違うたびに小さな子供から憧れの眼差しを受ける。


手を振ってくる子に対してはそれなりに愛想よく振舞って手を振るが、どうもそういうことに馴れていないため、すれ違うたびに疲れがたまっていくような気がした。


そんな彼は、一度子供を無視して歩いていたら隊長に『守護するものを無視とは何事だ!』と怒鳴られたことがある。


若干トラウマとなっているその出来事が脳裏をよぎるため、クリスは忠実に教えを守っていた。


それにしても人ごみが多く、なかなか思うように進めない。


「今年も凄いな…」


世界でも有名な王都の祭の賑わいに圧倒されながらクリスはそう呟き、王宮の近くにある王立魔術教会に向かった。