―――結界を破ることが出来たら…!


そう考えるが、闇に力は吸い取られ、もはや立つ気力もない。


目の前のシンディアの表情からは生気が薄れていくのが見える。


手が届いているシンディアでさえ護れない現実。それは彼に失望と絶望と云う名の現実を突き付けた。


―――俺は無力なのか…!?


その現実に呼応するかの様に、クリスを蝕む闇の勢いが増し、すぐにクリスの意識を闇の中に落とした。


その瞬間、声が聞こえた。





<チカラガ…ホシイカ…?>





意識が完全に無くなる直前だった。


その声の主が誰なのか、わからない。それでもクリスは答えた。


欲しい、と。


<ナラバ、クレテヤル。タダシ…後悔シテモ知ランゾ>


クリスの中から何かがこみ上げてくる。


目を開いた時、クリスの目の前に広がったのは、彼を包んでいるモノよりも更に深い、漆黒の闇だった。