captivate

ロックの拳で謁見の間の床は大きくひび割れ、瓦礫による高低が生じた。


その原因を作ったロックは拳を床から離し、大きく息を吸い込んだ。


「正当防衛だぞコラぁ！！」


たじろぐ兵に囲まれる中、ロックの怒号が響く。


その中で、皇帝は冷酷な瞳に怒りを宿らせている。


クリスの威圧する様な殺気とは異なった、背筋に寒気が走る様な冷徹な殺気が広間を覆う。


皇帝は静かに左手を横に突き出した。その腕は別空間にのめり込み、そこから大剣を取り出す。


姿を表した大剣は漆黒に塗られ禍々しいオーラに包まれていた。


「成程。正当防衛とな？ならば我も、この広間への破壊行為に対する報復と行こうではないか」


皇帝が黒剣を床に突き刺した。


同時にクリスの足元に六芒星が印された円陣が浮かぶ。円陣は結界を作り、外界と遮断したままクリスとシンディアを隔離した。


「“焔業の魔女”シンディア・ディエンバイムを生贄に捧げ、伝説の軍神を再誕させる！」


「何！？」


皇帝の宣言に、クリスから焦りが見えた。


「あああああッッ！」


円陣の中でシンディアの身体に闇が這い、徐々に四肢を浸蝕する。その浸蝕が進む程、彼女を恐怖で支配し、彼女は叫びを上げる。


「ラナを頼む」


レオンはロックにラナを託し、走った。


「アル！」


「ええ！」


アルは走りながら印を結び、レオンは飛び上がる。その両手には槍が召喚され、一直線に結界へと向かった。