captivate

「何故かと？それは我も知らぬ。どうしても知りたいのなら、そのヴァンガードに尋ねよ」


皇帝は王位と言う名の権威を備えた服の袖で口元を隠しながら話すが、その歪んだ禍々しいほどの笑みは隠しきれていなかった。


「…何だって？」


レオンは信じられないと言った表情で、横で魔女を抱くクリスを見る。


帝国が行う魔女狩りの動機を皇帝自らが知らず、他国の中隊長が把握している…そんな自体がある筈がない。


「クリス？お前…」


レオンばかりではないアル、シュバルツ、ロックも、全員が彼を見ていた。


「早く説明してくれんか？」


茶化すように皇帝が言う。


その愉しくてたまらないと言わんばかりの表情を見た途端、険しい表情をしていた彼の中で、プツン、と何かが切れた。


「何なんだよ…」


そう呟くと、彼は優しくシンディアを寝かせた。その瞬間ゆらりと風が舞う。


その風はクリスを中心に、突風に変わった。


その正体は殺気。


殺気が具現化し、風を媒介してクリスを中心に放射線状にに広がる。彼の近くにいた赤絨毯に並ぶ兵士は、余りのその衝撃の強さに数歩後退していた。


敵兵だけではなく、レオン達ですらも、ここまで強いクリスの殺気を経験したことは無かった。


「この野郎…！下手に出てりゃぁいい気になりやがって」


その殺気に立ち向かい、皇帝が立ち上がる。


「黙れ反逆者…誰にモノを言うか！」


王座から見下す皇帝もた、殺気を放つ。


「さっきから回りくどい…！言いたい事があったら、堂々と言ったらどーだ！」