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「皇帝陛下はここ…“覇の間”でお待ちだ」


大きな扉の前で男が立ち止まり、説明する。


その扉は、クリスタルパレスのそれよりも大きな扉だった。


「さぁ、入られよ」


その言葉を合図に、門番の兵士が大扉を開く。


開かれた扉の先には大きな広間が広がり、王座までは赤い絨毯が敷かれている。護衛兵がその淵に沿って並び、ニルヴァーナを降りた時見た様な光景が目に飛び込んできた。


「よく来たな。ヨーツンヘイムの騎士よ」


王座から低い声がする。声の主はまだ若く、顔だけで判断すればクリスと年齢が近そうだ。


「して、今回は何用か」


大ルグラン帝国皇帝ゲルニア・ダムラス=ルグランがクリス達に言葉をかける。


「ヨーツンヘイム王国ガーデン騎士団第7部隊クリス・ヴァンガードです。ヨーツンヘイム女王陛下の命より、皇帝陛下の下に馳せ参じました」


全員で頭を下げ、クリスが代表して挨拶をした。


案の定、相手はヴァンガードの名に顔をしかめた。


「ヴァンガード…」


クリス頭を下げながらうんざりした顔を浮かべた。つい溜息を吐きそうになったが、それすらも面倒に感じてきたので皇帝の反応を流して言葉を続けることにした。


「女王陛下からの命に関しては我が部隊、レオン・リーフィアが…」


クリスの紹介でレオンがクリスの横に並び頭を下げる。


「レオン・リーフィアです。お目にかかれて光栄です」


慣れた様にレオンが挨拶をする。


「早速では御座いますが我等が女王でありますルーシャ様からの御言葉を私が代弁させて頂きます」


レオンはそう言っていつも通り交渉に入ろうとする。


「うむ、よかろう」


「ありがとうございます。まず先日この大ルグラン帝国を、魔光石の開放を目的に訪れた魔女シンディア・ディエンバイム、並びに魔女ラナ・リンシー両名の身柄をこちらへと移して頂きたく存じます」