captivate

「…ス…い……よ……ス…」


…なんだよ、うるさい。


「…きて…ク……いたよ……」


耳元で大きな声を出され、身体が揺すられる感覚がする。


「クリス!そろそろ着くよ!」


「…う?」


シュバルツの怒鳴り声に重いまぶたを開ける。


「…」


状況はよくわからない。だが、ハッキリとわかってるのは眠いということだ。


「クリス!?ルグランだよ!」


まだ眠たいが、どうやら寝かせてもらえないようだ。加えて肩をシュバルツに揺すられているせいか、少し気持ち悪い。


諦めて状況把握に努めようと身体を起こし、周りを見渡す。ベッドが大きな窓の側に8つ並んでいる。反対側はバーカウンターになっている。明らかに自分の部屋ではなかった。


「ここ…ニルヴァーナか?」


そう呟くとシュバルツがわざと大きく溜息を吐く。


「当たり前でしょ!昨日からずぅ〜と!!眠りっぱなしなんだよ!!」


人差し指をクリスの額に突きつける。


当のクリス本人はしばらく考えて込んで、ようやく昨日の事が甦った。どうやらアルと話した後に、そのまま寝てしまったらしい。


「…で?着いたのか?」


背伸びしながらシュバルツに問いかけるクリス。


「さっきからそ〜言ってるじゃん」


一見、素朴なその質問は、シュバルツの機嫌を逆撫でするには充分なモノだったらしく、彼は呆れながら答えた。


…どうやら俺はいつもシュバルツを怒らせてしまうらしい。


そんなことを考えながら、ベッドの脇に立てかけといた2本の太刀と、たたんだジャケットを持ってコクピットへ向かうことにした。