captivate

休憩室のベッドでは、クリスが寝転がっていた。


「クリス…先程はすみませんでした」


目をつぶったばかりのクリスが目を開けると、アルの顔が飛び込む。


「急にどうした?」


クリスは身体を起こして、アルと向き合った。


「いや…王宮の件ですよ。迷ってて謁見できな…」


「うそだろ?」


クリスが言葉を遮る。アルは驚いてクリスを見たが、クリスの視線は敵を問い詰めている時の様な強いものだった。


「さぁ…それは…」


アルは言葉に詰まってそれしか言えなかった。


その返事に対して、クリスは一度視線を下げる。再びアルを見た時は、彼の目は優しい目に戻っていた。


「お前が謁見しないのは今に始まった事じゃないしな」


またベッドに寝転ぶクリスは、急に興味を失せたように、ゴロゴロし始めた。


「何かしら理由あるんだろ?」


「全く…貴方にはかないません」


眉をひそめながらアルが言った。それを見てクリスは言葉を続ける。


「まだ言いたくないみたいだし、そん時に言ってくれよ。それでいいや」


「…ええ」


笑みを浮かべてアルが返事する。少し期待しながら質問したが、あまりに普通に断られた事が可笑しく、思わずクリスも微笑む。


「じゃ、まぁ…期待してるわ」


クリスはそう言って寝返りを打ち、一眠りつくために目を閉じた。


「えぇ…必ず」


アルはクリスの背中を見て、小さな声でそう答えた。