現ヨーツンヘイム女王、ルーシャ・ディシディア=ヨーツンヘイムは執務室となる白銀雪の間にある王座に座していた。


その名の通り、雪国コルベット国のみに存在する純白のコルベット石の広がった間では、女王が側近と近衛兵の並ぶ中で執務に追われている。


エントランスで待ち合わせたゼフィ・ロックハートと合流した一行は、女王の前でひざまづき、頭を下げる。


「オーダー第7部隊所属遊撃特務部隊“蒼天の翼”…ここに」


王座に座るルーシャは書類をデスクに置き、優しい笑みを浮かべて話しかけた。


「よく来てくれましたね…シュバルツも、ありがとう」


「は…はいっ!」


いきなり呼ばれて緊張したのか、幼いシュバルツの返事は大きな声だった。


「昨日はありがとう。心から感謝してます。私だけではとても…」


女王が目を伏せながら語る。


「…クリス。貴方に大変な任を与えました。これを依頼するのはとても躊躇いがあります…それ程重い任です。勿論、拒否も受け入れます。ですが…それでも向かって下さるのですね?」


クリスは顔を上げて女王を見る。


「そのための部隊です」


その眼差しに、ルーシャが安堵の笑みを零した。


「みんな、顔をお上げなさい。…無事、帰還します様に、ここから祈っています」


若き女王が4人に祈りを捧げる。


無事、帰ろう。


女王の姿に、クリスはそう誓った。