『十将の六位が
 今回の指揮官だそうですね。ナストレイ・イェンセン。帝国一の戦術家だ』


レオンがエレノアに視線を落とすと、エレノアは深い溜息をついた。


『司令官
 今回の戦闘をシュミレートせよ』


手にしていた資料がエレノアに取られ、急な質問を受ける。しばしの沈黙後、レオンは解答を述べた。


『数では圧倒的に不利
 ですがレドミア通商連合からの
 飛空挺アルテミス
 対地戦ルーン付加型750ミリ砲
 …以上の導入を誤らなければ
 十分に勝算はあります』


『合格』


エレノアは立ち上がり、腕を組んだ。


『あとはシンディアとゼフィにかかってる』


『ロックなら問題ありません
 尚、後方支援として砲撃隊に
 シュバルツを配置しました』


『“最強の盾”の号を持つ者か…
 お前は彼の真の姿を…?』


エレノアの真相を突く、鋭い視線に捕らわれて眼を背けることが出来ない。


『勿論、知っています…
 彼をあの姿にしたのは
 俺の責任ですから』


エレノアの瞳から逃れ、瞳を閉じて肺に溜まった紫煙を静かに吐き出した。


『司令官、今は後悔するな
 不安が兵に移るぞ』


レオンの過去に何も触れずに、ただ背を向けて遥か先の戦場を見据えるエレノアの姿に、少しの安堵感が胸に広がる。


そしてエレノアはそのまま、小さな声で、だが力強い声で本陣にいる兵に一言だけ告げた。


『総員第一種戦闘態勢』