ゼアノスの瞳には疑念の色が浮かぶ。


それでもクリスは、先祖に構わずに言葉を続けた。


『まぁ理解出来ないだろうが…
 それで?
 俺には闘うしかないのか?』


『我を倒せるなら抗え
 我を倒せぬなら…散れ!』


ゼアノスの足元は爆発したように飛沫を上げ、その勢いのまま加速する。


黒刀は闇の波動を帯びて、刀身が伸びたように見える。


『…!!!』


どうにかしたいが、愛刀が手元に無い。


『散れ、末裔よ!!!』


『…ちっ』


ゼアノスの太刀が、静かな水面に戦慄の衝撃を与えた。


発生した水煙の中から間合いを取る為に脱出したクリスの額から鮮血が流れる。


左膝をついたまま、それを左手で拭った時、断末魔の叫びが聞こえた。


目を凝らして水煙の中を見ると、黒刀に宿っていた屍が刀から離れ、闇に蝕まれて行くのが見えた。


『非力…非力!!!
 力無き屍等、価値も無い!
 貴様は我が力と成るのか?』


紅い瞳がクリスを捕らえる。


クリスはその瞳に何かを感じ、その背筋を伸ばして立ち上がった。


『…ならねぇよ』


左手を横に振り払った時、光と闇の波動がクリスに集まった。