captivate

聖蓮祭に合わせた様な南の暴挙。


更に考えてみれば、世界の魔女の頂点・十天魔女の２人が南に向かってる際に起きたと言う事もクリス自身気にかかっていた。


と言うのは、通例では、ヨーツンヘイムを出て世界に魔女が散らばる時、極秘文章として各国のトップに連絡が渡る事になっているからだ。


魔女の存在を伏せる様に手配し、過激派の人間との衝突を防ぐ為の対策で、今回の件も例外ではなかった。


これは魔女に対して理解のある国にのみ行う行為であるが、南の大国には一応理解があったはずだ。


まして今日の聖蓮祭来客に南の大使もいる。


国での暴挙を承知で魔女の統治する国家の祭に、ノコノコとやってくることがあるのだろうか？


「…何かおかしい」


今までに感じたことの無いような不安が、また込み上げて来た。


「思い過ごしであってくれよ…！」


クリスの足は段々と早くなって行く。


近くに第４部隊の詰め所があったので、そこに急いで駆け込んだ。


「これは…クリス殿。どうかなされましたか？」


別部隊のクリスの来訪に、詰め所の騎士は驚いた顔をする。


「俺の部隊を宮殿に招集だ！急いでくれ！！」


「え？」


あまりにも唐突な言葉に騎士が言葉に詰まった。


「早く！」


「は…ハッ！！」


クリスの必死な表情に、騎士は即座に通信機を手にした。