captivate

『リーフィア調査官
 素晴らしいプレゼンでした
 聡明なるレドミア議員の皆様?
 私には十分に感じました
 我々レドミアの兵器は
 連合軍に提供すべき…とね
 皆様は如何でしょう?』


両手を広げながら立ち上がり、演説する男の言葉が、不穏な空気の入り混じる議会の空気を我が物に掌握する。


得体の知れない男の視線がクリスの瞳を捕らえた。


何気ない視線にクリスは寒気を感じる。何かが不可思議だった。今までで感じた事の無い“気”―――殺気ではない何かがクリスにぶつけられる。


本能的にクリスは刀に手をかけそうになった。


すると男は再び視線を議員に戻し、レオンに味方するかの様に話を続けた。


クリスは視線を若手議員に貼り付けたまま警戒を解く事無く、その展開を見届けた。


『さて如何です?
 エスヴィアが陥落した以上
 帝国に付くより連合に付けば
 我々の望む利益を手に出来る
 何より…平和も、ね』


意味深に再び視線が送られる。


この独特の絡みつく様な視線がクリスの頭に警鐘を鳴らす。だが、不確定要素に太刀を抜き、このまま上手く成立するであろう交渉を壊す様な真似は、一部隊長として決して許される行動ではない。


『よろしい
 レーヴェ君と連合の意思を汲み
 レドミア通商連合は連合軍に
 兵器支援を行う事について
 決を採る…賛成派、挙手を』


おそらく議長であろう白髪で髭のじいさんは議会に決を促す。


しばらく沈黙し、転々と議員が挙手する。


『おめでとう
 これで我々は連合軍を
 全力で支援する事になった』


レオンが頭を深々と下げる。近付いてきたレーヴェ議員が満面の笑みでレオンを握手を交わす。


それを眺めていたクリスはふと思った。


厄介な同盟を結んだのではないか…と。