captivate

「南の大国がね、魔女の大殺戮を始めたの」


「…何?」


いきなりの言葉に、クリスは驚きを隠すことが出来なかった。


今まであった各地での弾圧とは違い、“魔女狩り”という名の殺戮が国を挙げて行われるのは前代未聞のことだ。


「我々十天魔女のうち、ラナとシンディアが南に居たのだが…あの二人が行方不明なのだ」


リノアの隣に座っていた魔女、エレノアが言う。


「…まさか」


クリスには信じられない事実だった。二人とも一度戦闘訓練に付き合ってもらった事があるが、シンディアは十天魔女の中でも上位の実力者であるし、ラナの魔力も相当なものだ。


「事実なの」


リノアが目を伏せながら言う。


「待ってくれよ…それは今なのか?だって…南の要人だって、今日のゲストにいるだろう?」


クリスは要人のリストに目を通した事があった。クリスは、確かに鮮明に、リストに南の要人の名前が記されていたのを記憶していた。


「既に王室には連絡をしてある。安心しろ」


エレノアはそう言うが、クリスは内心、宮殿が気になって仕方がなかった。



「クリス。君には二人の捜索と調停に向かって欲しいんだ。かなり危険だから、君にしか頼めないの」


魔女ベアトリーチェが言った。


「俺に…?」


「そう。君に」