学校が終わると、定期を使って一旦大きな駅まで出てから、いつもと違う駅へ行くための切符を買った。ぼんやりと見覚えのある駅の名前を、路線図から探す時も電車に乗ってからでも、頭の中で何度もつぶやいた。

鞄には、いつもと同じように重たい教科書と、少しお茶の残ったペットボトル、携帯電話、財布、そして私の一番好きな作家の本が入っている。

はじめは帰宅ラッシュで混んでいた電車も、停車するたびにたくさんの人を降ろし、やがて1車両に2~3人ほどになった。

少し肌寒くなった車内の長椅子に座り、何とはなしに本を開く。

携帯はもう、見たくなかったから。