私がこれから生きていく上で、必ず必要になるのは、他でもなく【NIA】であると、ルナは断言した。


NIAは、人間界で言うところの、魔法や超能力みたいなものらしい。


これは、吸血鬼の世界ではひどく一般的なもので、階級が上位になるにつれ、能力も、力も、技術も上がるとか。


庶民の吸血鬼は、簡単な物体浮遊や念力しか使えないらしい。


「NIAの開花は、満10歳だ。
しかし、お前はまだみたいだな。
無理もない。今まで、人間として育てられたんだ」


私の年は今年で14歳。
NIAなんて、そんなものを感じたことは、一度もなかった。


両親はいないし、身内の人もいないけれど、他の子となんら変わらない生活を送ってきた。


裕福とは言えないけれど、それでも…。


私は、一人の人間だったんだ。


「スーノに選ばれた人間は、その能力と引き換えにあるものを喪う。
お前の場合はどうやら、“声”らしいな」


心を針で射抜かれたように、全身が凍った。


触れられたくないところを、ルナは気にした風もなく、遠慮なく触れてくる。


それが、たまらなく嫌だった。


ルナの眼が、私を捉える。
綺麗な青い目だ。


穏やかな、空のような色。
透き通った、海のような色。


「声が出なけりゃ、助けも呼べない。
呼んだとしても、無駄かもしれないがな。
だから、なおのことNIAを早いとこ開花させろ」


綺麗な眼が、恐ろしいことを言う。


開花させろと言われて、出来るなら、ベガに襲われた時にとっくに開花させているだろう。