幕末の雪

『今行く』


『熱心なんですね。近藤さんも、元気すぎて少し心配なぐらいだって』


細く華奢な手先を口元に添え、柔らかな笑顔を見せた。


似ているとは言っても、やはり沖田と違い女の顔であった。


沖田がこんな風に、優しく笑えば似ていないこともないかもしれない。…土方を前に、沖田がそのような笑い方をするはずもないが。


土方もさすがに、その笑顔は綺麗だと感じた。


目尻が下がり、口は微笑む程度しか弧を描かないが、それが逆に儚げに見えて美しい。


『……いつも何しに来てんだ?』


“間違えた”。……そんな、厳しい風に尋ねる気はなかった。


ただ飯を作る以外に彼女が何をしているか、今まで気にかけたこともなかったため知らなかった。


初めて間近で笑顔を見て、土方がミツに興味を持ったのは本当のことだ。


だが自分ではわかっていないが、今も眉間にしわの寄った怖い顔をしている。


しかも強い声音で尋ねてしまったのだから、きっと逃げるんじゃないか…と思っていたが、ミツはまた同じように微笑んだ。


『ご飯を作って、総司の様子を見て、皆さんとお喋りしたりお散歩したり』


自分の知らないうちに、他の門弟達と親しくあった事に、何故か悶々とする。


『ふーん……』


『自分から尋ねたのに、土方さんは私がご不満?』


『いーや。飯が旨え…ありがたいさ』


少し笑顔を見せた土方に、ミツは安堵の息をもらして胸をなでおろした。


『私土方さんに嫌われてるんだと思ってました。でも良かった、素敵な笑顔を見せてくださるんですね』


『別に嫌っちゃいねえよ』