この人なら、少しは頼れるんじゃ……。
口を開こうとした手前、山南は目を細めて微笑み言った。
「そう言えば明日、花見をすることになりました。鷹尾君も参加は強制ですからね」
ではこれで……。終始笑顔のまま、山南は廊下を歩いて行ってしまった。
言いかけた言葉を飲み込む。
遮られてよかった。言葉を交わさなくてよかった。…心の許してない相手と馴れ合う必要はない。
いずれ失う大切な人など、陽にとって作る必要はなかった。
反対派の山南であったが、器用な性格である故、どうしても放っておけなかった。
だから、譲り合いをし決められずにいた、陽を誘う役を買って出たのだ。
「花見……か」
過去に花見をした覚えがあったが、あまり詳しく覚えてはいなかった。
記憶の中にあるのは、今も何処かで生きている“大切な人達”と自身が笑う姿だった。
ふと陽は思い出す。
(私もあの頃は笑えたんだな……)
ーーーー
翌日、午後になると幹部達は陽を連れて桜並木の花見の名所に向かった。
屯所や巡察は試衛館出身で無い幹部隊士や山崎などに任せてある。
一応のため帯刀しているが、もちろん特徴的な羽織りは着ていない。風貌はただの浪人達だった。
途中で沖田のお気に入りの甘味処により、団子や草餅なんかを買った。ある程度酒も買い、男達は愉快そうに歩く。
その後ろを陽は俯きながら、明らかに地味そうに黙って歩いていた。
口を開こうとした手前、山南は目を細めて微笑み言った。
「そう言えば明日、花見をすることになりました。鷹尾君も参加は強制ですからね」
ではこれで……。終始笑顔のまま、山南は廊下を歩いて行ってしまった。
言いかけた言葉を飲み込む。
遮られてよかった。言葉を交わさなくてよかった。…心の許してない相手と馴れ合う必要はない。
いずれ失う大切な人など、陽にとって作る必要はなかった。
反対派の山南であったが、器用な性格である故、どうしても放っておけなかった。
だから、譲り合いをし決められずにいた、陽を誘う役を買って出たのだ。
「花見……か」
過去に花見をした覚えがあったが、あまり詳しく覚えてはいなかった。
記憶の中にあるのは、今も何処かで生きている“大切な人達”と自身が笑う姿だった。
ふと陽は思い出す。
(私もあの頃は笑えたんだな……)
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翌日、午後になると幹部達は陽を連れて桜並木の花見の名所に向かった。
屯所や巡察は試衛館出身で無い幹部隊士や山崎などに任せてある。
一応のため帯刀しているが、もちろん特徴的な羽織りは着ていない。風貌はただの浪人達だった。
途中で沖田のお気に入りの甘味処により、団子や草餅なんかを買った。ある程度酒も買い、男達は愉快そうに歩く。
その後ろを陽は俯きながら、明らかに地味そうに黙って歩いていた。
