幕末の雪

障子を開けると、上り始めた朝日の光が部屋に入り込んだ。


思わず陽は額に手の甲を当てる。


(眩しいな……)


昨夜、幹部隊士に改めて紹介され沖田に挨拶を済ませたが、まだ隊士達には入隊すら公表していない。


そのせいで陽はまだ勝手な外出を土方から許されていなかった。それは、部屋から出ることも同様である。


井戸に行って顔を洗いたいが、第一井戸の場所すらしっかりと把握していない。


どうしようか迷っていた時、ちょうど廊下を通り過ぎる藤堂と視線が合った。


「お……?あ、おはよう」


「……ず」


「え?」


「水。顔が洗いたい」


ーーーー


藤堂は桶と手ぬぐいを用意し、井戸から水を引き上げた。


「平助にしては早いな」


振り返った先にいたのは欠伸をする原田だった。


もう普段の着物に着替えた藤堂に対し、原田はまだ夜着で髪を下ろしている。


そういえば陽は髪を結っていたけど、そのまま寝たのか?と思った。


朝日に照らされた髪はキラキラと赤く輝いており、夕陽に当てれば更に綺麗な赤をするのだろう。


考えると、藤堂は陽の髪を夕陽に当てたくて仕方なくなった。