幕末の雪

斎藤の言葉で、再び沖田は原田に視線を移す。


(左之さんが…ね。意外だったなぁ)


組内での一番の色男は土方で、それだけ多くの女性から好意を寄せられることがあった。


だけれど原田には土方と違った魅力があり、女性を扱う点では土方よりもずっと慣れていた。


暇な時には永倉と共に、何度も島原に行っているわけであるし。


まさか組一の女慣れした男が、幹部で一番、陽を嫌うとは沖田も思いはしなかった。


「けど、正しいのは左之さんだよ。元々人斬りだったあの子を危険視する人間は数人いなくちゃいけない」


普段その役を買って出る沖田が、今一番陽と会話をしたいと望んでしまっている。


原田には悪いが、しばらくはそのままでいてもらう必要がある。


新撰組のために。


「……俺は、それでも鷹尾を信じる努力はするつもりだ」


「うん。わかってる」


言葉を交わした後、二人は黙り込んだ。


そのまま土方が来る時まで、お互いに言葉は発さず、ただ無心で開いた障子から覗く夜空を見つめていた。


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ここに来て初めて監視無しで目を覚ました陽。


部屋の中にも外にも、そして今朝は天井にも人の気配はなかった。


特別感じる事はないが、いつもより気分が良い。