幕末の雪

土方が去った後、斎藤は部屋の障子を開き中の様子を伺った。


布団の中に少女は確かに横たえている。だが、寝息は聞こえず起きているのも確かである。


「……」


斎藤は部屋の中に入り、少女の枕元すぐに正座をした。


ここまで来た時にやっと少女は斎藤の行動に疑問を抱き、首から先だけを横に向けた。


普段監視と言えば部屋の外にいるだけで、部屋に入って来る時は行灯に明かりをつける時ぐらいだ。


枕元に意味もなく座られたのはもちろん初めてだった。


「お前と話すのは初めてだな」


「………」


少女の目に映る人影は危険でないはずなのに、全くと言っていいほど心情が読めず不安を煽る。


斎藤はそのまま続けた。


「新撰組への勧誘を断ったそうだな。新撰組への入隊が頷けないのもわかるが、現状を理解してはどうだ?」


「……何が言いたい」


少女が声を発した後、あの夜と同じように雲から隠れた月が姿を現した。


庭の草木は風に吹かれ、こすれ合って音を立てる。


サアァーー……カサカサ…


月光を妖艶に反射する斎藤の瞳が、一瞬黒目の周りに光を走らせた。


「新撰組に入れ。そう言っている」