幕末の雪

そういいお膳を持ち上げても、少女から返事が来ることはない。


だが藤堂は、一度言葉を交わせたことで今は強気だった。返って来ることのない言葉でも、送らなければそれ以前の問題なのだから。


自分では耐えられないような静かで退屈な空間の中、監視がいて過ごしづらいにも関わらず弱音一つ吐かず媚も売らない少女。


頑として心を開かさそうな人には、お節介と言えるほどだろうが、こちらから喋りかけないことには始まらない。


藤堂は小さく呼吸を吐き、頑張れと心の中で自分を鼓舞した。


「……美味かったか?いつも全部食ってくれてるよな」


「……」


喋りかけられることを予想していなかった少女は少し遅れた反応で、視線を藤堂に移した。


だが、少女はその後も口は開かず藤堂からも視線を外した。


(だよな……)


藤堂は残念に思いながら部屋を後にした。