唯一の救いといえば、被害者が新撰組の敵でもある長州や反幕府勢力の武士や不貞浪士だけであるということだ。


そのため完全な敵視は出来ず、無傷で捕らえるより他ない。


新撰組の一部では、味方に引き入れようという考えもある程だ。


だが、このまま野放しにして進展もしないのでは、新撰組として示しもつかないし、もし無差別殺人であった場合に手遅れになってしまうかもしれない。


「どうにかならねえかな…」


先ほど新たな死体を巡察中に見つけた男は、あぐらをかきながら頭を掻くようにしてため息を吐いた。


この男は十番隊組長、原田左之助。


その大柄な体と備わった筋肉、色気ある整った顔から女に惚れられやすく、更に槍の腕前もそこそこある。


「とにかくまずは彼の姿を見ないことには、手がかりもありませんし…」


この眼鏡の男、新撰組総長の山南敬助は白く細長い指を顎に添える。


山南は博識であり、剣術もさながら頭脳の方でも立つ。


それに加えかなり雄弁で口も達者で、今まで幾つもの場面を彼の口先だけで解決してきたほどだ。